2001年10月15日 社会調査および実習資料

 

サンプリングと様々な調査法

 

社会調査における誤差

 

 標本誤差(統計的誤差) サンプリングによるもの、統計的な推定が可能

 非標本誤差

  (1)不完全な標本抽出(抽出台帳がない、など)

  (2)調査不能(不在、転居、拒否)

  (3)調査員の不正

  (4)調査票の不備

  (5)処理上の誤り(回答記入、コーディング・入力、集計時の誤り)

       

無作為抽出法                                                                

 1.単純無作為抽出法                                                       

  乱数表やサイコロを使って必要数を抽出                                   

  あまり実用的でないし、人数が多いと実行が困難                           

 2.系統抽出法                                                              

  出発点を乱数表を使ってきめ、リストから一定の間隔で抽出                 

 3.層化抽出法                                                             

  リストをいくつかの層にわけ、各層から必要数を抽出する。                 

  層化をした方が、精度は必ずよく(標本誤差が小さく)なる。               

 4.多段抽出法(通常、2段抽出法)                                          

  確率比例抽出法 抽出単位を人口で重みつけた確率で抽出し、               

          各単位から同数のサンプルを抽出                         

  等確率抽出法 抽出単位を等確率で抽出し、各単位から人口に比例した       

        数を抽出。確率比例抽出法よりも精度は悪い。                 

有意抽出法  割当法(有意抽出法と無作為抽出の中間的な方法)                

              いいかげんに抽出する方法(街頭調査など)                     

       

 無作為抽出 「いいかげん」に抽出することは無作為抽出ではない。無作為抽出とは、母集団の対象がすべて等確率で選ばれるように統制して抽出する方法のことである。

 

 サンプル数  単純無作為抽出の場合、標本誤差は、サンプル数の平方根に反比例する。つまり、サンプル数を4倍にすると標本誤差は半分になる。サンプル数は、費用で決めるのが普通だが、推定すべき比率から求める公式もある。

 通常の世論調査では、1000から3000もとれば大体十分(と言われている)

 比率についての信頼度95%水準のサンプリング誤差は、

 2[(100−p)p/n]0.5  p:真の比率(%)  n:標本数

 例えば、n=500,p=50%の時、誤差は4.5%、 n=100,p=50%の時、誤差は10%となる。

 

 重み付きサンプリング法

 特定の成員について詳しく調べたい時に、その分だけを多くサンプリングする方法。全体の結果を記述する時には、過小にサンプリングされた対象者の分を重みづけて補正しなければいけない。

 

 

事例 電話番号による抽出

 世帯によって人数が違うので、単純に電話番号で無作為抽出をすると、一人暮しの人が多く選ばれることになってしまう。そこで、事前に世帯人数が分からない場合は、後で結果を補正する。

 

 電話番号を無作為に抽出

   ↓

 電話をかけ、その世帯の人数をきく。

   ↓

 その世帯の中から一人を無作為に抽出する。

 (電話に出た人を選ぶのは、無作為抽出にはならない)

  例えば、誕生日の月日を利用することが考えられる。

   ↓

 調査実施

   ↓

 分析の時、世帯人数によって結果を補正する

 

全国レベルの市場調査世論調査の2段階確率比例抽出法

 

 全国を3000程度の地区に分ける

   ↓

 市町村規模で層化して、(1)大都市、(2)中規模都市、(3)小都市、(4)町村から

人口に比例した確率で100の地区を抽出する。

   ↓

 各地区から同数の対象者(20名)を台帳からサンプリングする

 

 

サンプリングは必要か?

 結果の代表性(例 この結果は筑波大学の意見を代表するものだ)を主張したければ、全数調査かサンプリングをするしかない。この手続きをとらなければ、いくら対象者数を増やしても無意味である。

 

有意調査(恣意的サンプル)は、正当化されるか

 無作為調査の方がよいには越したことはない。しかし、研究目的が代表的な回答を得ることが目的でなければ、有意調査も一応肯定される。ただし、その場合でも可能な限り、性・年齢などの外生変数を一定になるようにコントロールすべきである。

 

 例 ソニーの製品Aとパナソニックの製品Bの所有者について、利用動向を比較したい。

→通常の無作為調査では使用者がきわめて少なく分析なたえないと考えられる場合、恣意的に対象者を集めることも肯定される。ただし、この場合も、性・年齢などが両集団で差がでないようにした方がよい。

 

 

 

 調査(狭義の調査)の分類

 記入者は誰か         自記式調査 − 面接員による調査

 あらかじめ質問票をつくるか  質問紙調査 − 聞き取り(ヒアリング)調査

 調査の対象は何か       個人調査  − 集団調査(企業調査、世帯調査)

 対象数の規模         定量的調査 − 質的調査(事例研究)

 要因の統制の有無       実験    − 非実験

 

質問紙調査法の比較

1.面接調査 調査員が質問し、回答を記入。(例:個別訪問面接法)

2.留め置き調査(配布回収法) 調査員が調査票を配布し、本人が記入後に回収する。

3.郵送調査 郵便で調査票を実施。

4.集合調査 対象者にある場所に集合してもらい、調査票に回答してもらう。

5.電話調査 電話による調査。

6.インターネット調査 インターネットを利用した調査

 

 

 実施時の注意点

 

 ○質問紙調査では、回答者全員が同じ条件で回答できるようにする。

  例 ある人には面接調査、ある人には郵送調査、というのは不可(厳密な比較は不可能)

 

 

 ○対象集団が不明確な調査(友人に調査票を次々にまわすやり方など)は、回答数を増やすためとしても、好ましい方法ではない。これでは、対象の集団が何なのか客観的に記述できない。科学的な調査のためは、調査の方法が他の人にも明確であり、再現性があることが必要である。

 

  例 たとえば、ある授業時にやった調査ならば、「・・の授業の聴講学生」という客観的な定義ができるので可。「○月×日△時に食堂の食事している学生に調査」も、あまり好ましくないが、一応どういう対象を調査しているかは明確なので可といえる(ただし、その場合も可能ならば○人おきに選ぶように、ランダムにする方がよい)。

 

 ○回答者のプライバシーを尊重する。

  例 収入や学歴は回答者が答えるのを嫌がる場合がある。どうしてもプライバシーに触れる質問をしたい場合は、回答の匿名性を確保する工夫を考える。

 

 

 

質問文が載っている文献については、以下を参照のこと。なるべく過去の質問文と同じものを用いた方が、結果の比較もできるし、質問文の信頼性という点でもよい。

http://shakosv.sk.tsukuba.ac.jp/~ishii/education/bunken.html


質問紙調査(調査票を準備し、全ての回答者に標準化したやり方で質問する)の類型

 

面接調査

留置調査

郵送調査

集合調査

電話調査

Internet調査

調査法の概略

一対一で調査し、調査員が回答を記録する

調査票を被調査者に渡し、記入後に回収

郵便で調査票を配布し、回答を記入後、郵便で回収

多数の被調査者が集合している場所で同時に実施

電話を使って調査する。

Internet上でemailまたはWebを使って調査する

長所

質の高い回答データが得られる

面接調査よりも少ない予算で実施可能

広い地域で実施でき、予算も安い

効率よく調査でき、調査時に説明なども可能

迅速かつ安く実施てきる

データ入力の必要がない。費用が安い

欠点

費用が高い

面接調査よりデータの質が低い

回収率がきわめて低い

回答の代表性が不明確

回収率(協力率)が低い、少ない、単純な質問しか聞けない、在宅者に偏る

回答者がインターネット利用者のみ

その他

最も高い精度が要求される調査には訪問面接法が使われる

本人記入のため、記入ミスや記入漏れのチェックが必要

回収率を考えるとあまり安くないこともある

質問紙などのタイプを統制して、実験にすることもできる

サンプリングにはいくつかの方法がある。

通常のインターネットユーザよりさらにヘビーユーザに回答が偏る傾向がある

 


 心理尺度

 

 いくつかの質問への答え(質的なデータ)に潜む一次元的な構造を数量化する方法を尺度構成法という。ガットマン尺度、リッカート尺度、サーストン尺度が有名である。また、展開法や多次元尺度法もこれに含まれる。

 参考文献 堀洋道、山本真理子、松井豊編『心理尺度ファイル』恒内出版 (361.4 H87)、 堀洋道監修『心理測定尺度集1〜3』、サイエンス社、 飽戸弘『社会調査ハンドブック』、日本経済新聞社

 

 リッカート尺度では、測定の信頼性をモデル化の基礎においている。

 信頼性…同一現象を反復測定した場合の一致度  例 物の長さを定規で測る。

 妥当性…測定している指標が、目標とするある抽象的概念を測っているかどうか。 例 知能の程度として、体重を使う→信頼性はあるが、妥当性はない。信頼性は、妥当性の必要条件でもある。

 一般に互いに一次元的な項目(正の相関がある項目)については、和をとると一般に信頼性を上げることができ、差をとると信頼性が下がる。これは、尺度を作る時に得点を加算する根拠である。

 

例 リッカート尺度を想定した「学習意欲」に関する尺度の例(『心理尺度ファイル』より)

問 この一週間ほどの学生生活を振り返って、次のことがらはあなた自身にどの程度あてはまりますか。「非常にあてはまる」から「全くあてはまらない」までのうちから、一つ選んで○をつけて下さい。

 

 

1.全くあてはまらない

2.ほとんどあてはまらない

3.どちらとも言えない

4.かなりあてはまる

5.非常にあてはまる

1.私は、勉強に積極的である

2.私は、勉強の目的を持って、毎日コツコツと勉強している

3.私は、家庭学習を、毎日時間を決めてやっている

4.私は授業をよく理解している

5.私は、勉強が楽しいと思う